2013-06-28

「ドキュメント 隠された公害―イタイイタイ病を追って」鎌田慧

ドキュメント 隠された公害―イタイイタイ病を追って (ちくま文庫)ドキュメント 隠された公害―イタイイタイ病を追って (ちくま文庫)
鎌田 慧

筑摩書房  1991-01
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富山県のイタイイタイ病と同じ病気が東邦亜鉛鉱業所のある対馬でも発生していると知って、1969年8月、著書は対馬に渡った。しかし、対馬樫根部落の住民は一致団結して病気の存在を否定し、マスコミの取材を拒否しつづけた。いったい対馬に公害はあるのかないのか、もしあるとすればなぜ隠そうとするのか。一企業が住民に行ったおそるべき支配構造の実態を把えた迫真のドキュメント。


若きルポライターの、挫折の記録。

良書です。



イタイイタイ病は、富山県で発生した公害病。


その公害病が、対馬でも発生。
真相をさぐるべく、作者が潜入取材を試みる。

そのようすをえがいたのが、この本です。

ルポですが、著者自身の語りのていでつづられています。

若きジャーナリストが、真実をあばくために奔走する。
しかし、住民も、会社も、一貫して公害を否定。
真実はどこにあるのか、
分からないままもがきつづける筆者。
そして自分の行為が正しいか、
それすら分からなくなる。


公害病のおそろしさを紹介しつつも、
印象に残るのは筆者の絶望感。
正義感と野心あふれる駆け出しジャーナリストが、
苦悩する姿が心に残ります。

鎌田さんはこれがデビュー作だそうで、
いまではルポライターとして
とても著名な方ですが、
この挫折があったからこそ今があるのでは、
と思わされる内容。


ルポタージュというより
まるで小説を読んだかのような読後感を覚えました。


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