2014-01-09

「飼い喰い――三匹の豚とわたし」内澤旬子

飼い喰い――三匹の豚とわたし飼い喰い――三匹の豚とわたし
内澤 旬子

岩波書店  2012-02-23
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世界各地の屠畜現場を取材してきたイラストルポライターが抱いた、どうしても「肉になる前」が知りたいという欲望。見切り発車で廃屋を借り豚小屋建設、受精から立ち会った中ヨーク、三元豚、デュロック三種の豚を育て、屠畜し、ついに食べる会を開くに至る。一年に及ぶ「軒先豚飼い」を通じて現代の大規模養豚、畜産の本質に迫る、前人未踏の体験ルポ。


肉は、どこからやってくるのか。

そんな、当たり前だけど、
実はよく知らないことをズバリとルポタージュする。
しかもジャーナリズム精神ではなく
純粋な好奇心として。

良書です、
娯楽作品としても良質。


内容は上記の引用のように、
屠畜現場の取材を通して、
肉になる前、つまり赤ちゃんのときから
豚を育ててみたいと思うようになり、まったくの畜産素人ながら
東京から千葉の郊外に移住してまで
半年にわたって実際に3匹のこぶたを育て、
さらにそれらを、最終的に食べる。

そんなところまで追った体験ルポ。

体験もの。これが強い。

ことばひとつひとつが、リアル。

育てている豚をかわいらしく思う描写とか、
豚に脱走されそうになったときのたたかいとか。

体験者ではないと書けそうにない臨場感。


こういった「屠殺」のレポって、タブー視されていることもあり、
差別意識を是正したい、またはその現実をしっかりと本で示す、
さらには肉を食べているくせに製造を知らないなんて!
みたいなジャーナリズム精神にのっとって書かれがち。
これは一切ない。それがいい。
好奇心のみ。
なので、「育てた豚を自分で食べる」という内容なのに、
一切ヘビーさはありません。
むしろ軽すぎてビビるくらい。


気負わず読めて、勉強にもなる。
良書です。


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